商品とネガティブな言葉を並べて書いたら非承認?
とある広告主から、ASP経由で注意喚起のメールが配信されてまして。
要約すると「当社製品に対するネガティブキャンペーンの禁止」という内容でした。「ステマ、被害、トラブル、クレーム、後悔」等のネガティブな文言の使用を禁じるそうです。
「事実無根の不当なネガキャンをやめろ」というのは当然の主張です(広告掲載しながらネガキャンする意図はよく分かりませんが)。
私が違和感を覚えたのは後半部分で、ネガティブな文言の使用を禁止。これってつまり消費者に対し不利益を防ぐための注意喚起情報を出してはいけないってことです。
それでレビューサイトの公益性、情報の客観性を保てるんでしょうか?
「金を払ってるんだからウチに都合の悪いことは言うなよ(ギロリ)」という姿勢は、企業の本音としては理解できます。メディアもお得意様企業の機嫌を損ねないように忖度して婉曲な表現に留めるか、マイルドな両論併記を心がけるのが普通でしょう。
何があったのか詳しい事情は知りませんが、今回はかなり高圧的な表現で「禁止令」を出してきたのでちょっと驚きました。Googleのサジェスト候補が酷いことになってるので過敏に対策を打ってきたのでしょうか。
ダメと言っても隠し通せるわけがない
残念ですが、今の時代はもうこんな工作じゃ悪評をごまかせませんって。
100点満点で完全無欠、誰もがべた褒めする商品なんかあるわけないし、火のないところに煙は立たない。商品の悪評が多発的に広まる以上は何らかの原因があります。多くの場合、実際に商品がダメだから叩かれてるんです。
潜在的に不満があるとこに何かがきっかけで着火して、「そうそうここの商品酷かった!」「だよね~、うちも苦い経験あるわ」と負の共感を巻き込んで延焼する。
商品の根本的な対策をせずに我々のような零細メディアに圧力かけたとしても個人のSNSは止められないし、美辞麗句でユーザーを騙して商品売ったところで「こんなの買うんじゃなかった」って書き込まれたら余計に悪い心証与えますよ。
その上さらに裏でメディアの口を封じてる事実まで露見したら、消費者に対し極めて不誠実な企業だとの印象を振りまいてしまいます。
アフィリエイトサイトなんて質の低いところはたくさんありますよね。それがブランドイメージにマイナス影響を与えていると判断するなら、案件をクローズドにしてきちんと審査すればいいだけ。少数のサイト限定で高単価出して、担当者レベルで打ち合わせしながら記事を作れば意に沿わないコンテンツはできないでしょう。そのコストをかけずに全承認で案件ばら撒いて、ネガティブなこと言われたら「禁止、禁止ー!」って。
承認権が武器になるか
この広告主が武器として握っているのは成果の承認権です。「うちの広告で発生した成果を非承認にされたくなかったら言うこと聞け」って拳銃を突きつけてる格好ですけど、こんな広告主には付き合ってらんねー!って広告をはずして暴露大会になったらその武器は全く役に立たなくなります。
ちなみに弊社のサイトではこの商品はとっくに広告はずしてるので非承認をチラつかせても無意味。痛くも痒くもない。
別にこのメーカーを屈服させたいわけじゃないので企業名や商品名は出しませんけど、正直あんなメールもらっていい気はしないですね。もう二度と弊社のサイトで扱うことはないでしょう。
広告主とメディアがやるべきことは
口コミサイトやレビューサイトが果たすべき役割は、商品の良い点と悪い点を洗い出し、レビュアーのライフスタイルや価値観に照らした上で、その長所がユーザーにもたらすポジティブな未来像を評価、訴求することです。
「この商品は◯◯を求めている人には相応しいが□□を重視する人には向かない」という判断基準を示してあげられるのが良いアフィリエイトサイトであり、その上で納得して買ってくれた人こそが商品のファンやリピーターになってくれるのではないでしょうか。最近は瞬間的な発生件数よりもリピート率などLTVに対する貢献度を評価してくれる広告主が増えていて、弊社としてはありがたいことです。
一方この広告主がやっているのはポジティブでないものを無理やりポジティブに見せているだけ。そんなものは広告ではありません。詐欺です。無駄な警告メール書いてる暇に欠点を解消した商品を開発して、お金出して買ってる既存ユーザーさんの不満に対して誠実な対応をした方がいいと思うのですが。
編集権はメディアのもの
この問題の背景には、「金を出してやってるんだから提灯記事で情報操作するのが当たり前だろ」という広告主の勘違いがあります。
メディアの編集権はメディア自身が保有するものです。自分のブログに何を書こうが、法に触れない範囲での感想や批評ならば文句を言われる筋合いはありません(名誉毀損、風説の流布、偽計業務妨害、優良誤認などはもちろんNG)。
スポンサーは編集方針が気に入らなければ黙って案件を引き上げ、最初から自社主導でサイトや記事を企画すればいいだけのこと。頑張って商標名入りの検索キーワードでGoogle1位にしてください。
広告費と引き換えにメディアの信用を毀損するような介入をしてくる広告主も、安易にそれを受け入れるメディアも、どちらも消費者利益をないがしろにしているのではないでしょうか。
この広告主がやるべきなのは、事実無根の不当なネガキャンがあるなら法的措置を取る、一方で真摯に商品の改善を続け、既存ユーザーさんのフォローにも力を入れることです。具体的な事例や客観的根拠に基づいた批判や感想をネット上からもみ消すことではありません。
また、広告提携を全承認しているなら取りやめて、高単価クローズド案件にして少数精鋭の体勢へ切り替えるのがよいと思います。ASP側が「このメディアなら間違いない」と太鼓判を押す優良メディアとガッチリ手を握ってサイト作ってもらえば、こんな不毛なメールを送らずに済むと思いますよ。
変なメールが来たので勢いに任せて思ったことを書きましたが、この商品のネガキャンをめぐる実情や背景は全く知りませんし、商品名を出すつもりもありません。広告主とメディアの編集権について考えながら書きました。
読者さんが悲しい思いをしないように、まっとうなサイトを作りたいものです。