3月25日に薬機法(薬事法)のセミナーに参加してきました。
セミナーの詳細:薬事法&健康増進法セミナー
内容が多すぎるので全4回にわたって開催されるそうです。まだ3回あるので興味ある方はどうぞ~。
薬機法単体での書籍やセミナーは珍しくないのですが、アフィリエイト事業者へ向けてチューンされた内容の催しは見たことがなかったので、4回コースで申し込んでみました。
主催はアフィリエイト塾のALISA、講師は薬事法広告研究所・副代表の稲留万希子さんです。僕はALISAの関係者ではありませんので、ASP経由での申込みとなります。
この記事の主な内容
そもそも薬機法(薬事法)って知らないとまずいの?
アフィリエイトをやってる人で、実際一番多いのはこのレベルの層だと思います。
法律って、実は誰も教えてくれないんですよね。企業だったら初期研修やOJTでなんとなく経験から共有したり、大企業ではeラーニングでいつのまにか修了したことになってたり、といった感じでしょうか。会社ならまず上司にスクリーニングを受け、怪しい場合は法務部や顧問弁護士がチェックしてるでしょうから、まあ普段はあまり意識しないで済みます。
一方、個人独力でアフィリエイトサイトを作っていると、よほど勉強熱心な人でもない限り、関係法令について全く知識を得る機会がないケースが多いように思われます。だって誰も教えてくれないから。景表法や不正競争防止法を知ってたら、ランキングサイト作るのはリスクがあって躊躇するんじゃないかなあ…。
広告主さんと打ち合わせしてる時に、この質問をよく受けます。「比較ランキングサイトの上位枠を買わないかと打診されてるんですが、これはどうやって法的にクリアしてるんですか?」って。まともなコンプラ研修受けてる広告主なら当然の疑問でしょう。あ、一応言っときますけど僕はランキングサイトは作ってません。
法的に危ないのをちゃんと分かった上でリスク背負って薄氷に踏み込んでる人はちょっと置いときますが、問題はそういうリスクを全く知らない人が相当数いて、何が悪い事なのか認識してないまま、春先の氷が解けかかった湖面を全力疾走してるような現状が見受けられることではないでしょうか。
今回の話題に出てきた薬機法は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」のことで、その前身が薬事法。平成26年に改訂と名称変更があったため、いまだに薬事法と言っている人や書籍も多いです。細かい違いはあるけど薬機法と薬事法の性質は同じ。
中身についてはぐぐったほうが早いし詳しいので、僕ら視点で大まかに言うと、医薬品や化粧品の効果や安全性に関するトラブルを防ぐために、表示や広告のルールを定めた法律ということになるでしょうか。
言い換えると「医薬品や化粧品の広告にはルールがあって、それを守った上で宣伝販売しましょう。ところで、アフィリエイト広告ではどこまでがOKで何がNGかあなたは言えますか?」と聞かれたら目を逸らしちゃうよね、ってことです。
それってやばくね?
セミナーを受けて考えたこと
有料セミナーなのでもちろん資料を転載したり中身を詳細に書いたりするわけにはいきません。かいつまんで僕が得た雑感となります。
完全に法規を守ろうとすると企業の販促活動は事実上不可能に近い
「日本の公道は速度制限が厳しい」とよく耳にします。外国のことは知らないけど、確かに体感ではそう思う事が多い。ゆえに多少のスピード違反や短時間の駐停車禁止違反は割りと多くのドライバーが経験してるんじゃないでしょうか。
昔、僕が外回りの営業をやってた頃、青森の田舎で見通しのよい直線の農道が40km制限になってて意味わかんねー!と叫びながらアクセルペダルを踏み込んだ瞬間、白バイがどっかから飛び出してきた思い出があります。
これルールがおかしいだろ!人なんかどこに歩いてるんだよ、見渡すかぎりの大草原じゃんか~!と、いくらゴネたところで後の祭りというわけで、無事にキップを拝領し反則金を払いにトボトボ銀行へ行かされ、ゴールド免許があえなく青に切り替わる始末。
まあ珍しくもない愚痴ですが、薬機法もこれと同じで「ルールが厳しすぎる」とか「皆やってるのになんでオレだけ」といった言い逃れは一切できないらしい。
そもそも法律や税制って誰も教えてくれないのに、全部知ってることが前提。学生なんて源泉徴収の意味すら知らず、バイト辞めたら年末調整できずに税金払いすぎてたりしますよね(確定申告すれば払いすぎた分は戻ってくる)。学校では生活するための知恵は授けてくれません。道交法は免許取る時に試験あるけど、広告提携する際に薬機法の試験なんて必要ないし、知らなくてもアフィリエイターにはなれちゃうわけです。
ただ「実態としては広く横行しているように見えていても、出るとこ出て白黒つけたら完全アウト」という点では著作権侵害も似たような感じ。グレーっぽく黙認されてるみたいだけど、いつ何があっても不思議じゃない、社会的によくない影響が無視できなくなり、圧力が閾値を超えたら一斉に摘発されたりするかも、というリスクはある。
だから、もしやるとしてもリスクやペナルティは理解した上でやるべきだし、「どう見ても消費者にちゃんと利益があるんだから、これが不法というならオレは戦う」くらいの大義名分を示せるラインは守った方がよいと、僕は考えています。「自分が何したか分かってるよね?」と言われて消え入りそうな感じで「…ハイ。すみませんでしたああ(号泣」みたいなことはやるな、ってスタンスです。
取り締まる側としても「オレらに余計な仕事増やさないよう上手にやれよ」というのが本音に近いんじゃないでしょうかね。
ですから「この表現はOKですか?」と広告主や役所や消費者団体などに問い合わせるのは、絶対にやめましょう。ルールに照らしたらダメとしか言えないので、寝た子を起こすことに直結します。繰り返しますが、阿吽の呼吸で上手くやりましょうね。
あ、もちろん消費者利益を損なうようなこと(詐欺や誇大広告)は絶対ダメですよ。そこ誤解しないでくださいね。消費者のためになることを分かりやすく書いて比較しようとすると、どうしてもガイドラインを踏み越えてしまう…というやむにやまれぬ葛藤の末に、リスクをわかった上でやるなら僕は何も言えませんって話です。バレなきゃユーザーさんを騙して広告踏ませてもいいなんて一切言ってませんからね!
薬機法だけでなく隣接する関係法令と相互に矛盾する部分がある
今回の内容で特に面白いなーと思ったのはこれ。
例えば健食系の物販アフィリエイトの場合、関わってくるのは薬機法だけではありません。健康増進法、食品衛生法、特商法、景表法、食品表示法、JAS法といった種々の規制が入ってくるので非常に煩雑であり、また恐るべきことに相互に矛盾する条項が含まれているらしい。
相互に矛盾するとは要するに、片方の法律を守ると他方に抵触し、全ての関係法令をクリアすることが原理的に不可能である、ということです。管轄する省庁が違うせいでこんなことになっているのだと思いますが、これ素人が手を出すには危険な案件だと思いませんか?
現実的にはリーガルチェックで全てを満たすことができないとしても、少なくとも運営責任者として「どの部分がどの法律に触れる恐れがあるのか、どの程度の罰則があるのか」は把握しておく必要があります。で、仮に指摘を受けた際にどうするのか。スポンサーや広告代理店にどう説明するのか、その準備もしておかなければならないでしょう。
そんなん自力じゃ無理だべ…と頭を抱えたあなたにぴったりなのがコチラ! タイミングよく3月下旬にA8がリリースした、リーガルチェック代行サービスがあります。
薬機法・景表法対策に!運営サイトのプロダクトを審査代行
(アフィリエイトリンクではありません)
有資格者がサイトを見て適法か診断し、プランによってはリライト案まで出してくれるそうです。最低発注5万円からお願いできるそうなので、これは大いに活用したいところ。他のASPも追随して欲しいサービスです。こないだお会いしたアフィリエイトBの部長さんには導入を前のめりでお願いしておきました。
Welq以降、広告主はアフィリエイターを選びたいと思い始めた
Welqが発火する前からずっと肌で感じてたことなんですけど、今後は個人の零細アフィリエイターって厳しくなるんじゃないかな~と思っています。
薬機法に限らず、スポンサー担当者から見た場合、膨大な数のメディアを抱えて自社の広告を貼らせてることに対する負担感がどんどん重くなってるんですよね。
例えば比較サイトにデッタラメな優良誤認や事実無根の不当表示、他社商品への誹謗中傷や名誉毀損があったとして、その責任を負うのはサイト運営者だけじゃなくて、実は販売元の企業も同様です。つまり低レベルなメディアと適当に提携全承認なんてやっていると、いつ広告主に訴状が届くか分からんってことです。
多くの広告主ではWebマーケ部門に余剰人員はいません。カツカツなリソースでいちいちアフィリエイトサイトのパトロールなんてできませんから、基本は放置になります。見ているのはCPAや件数だけ。で、知らないうちに変なサイトがぶっ飛んだことやってて、消費者からクレームや問い合わせが来て、慌てて火消しに回る例を耳にすることがある。
そういうケーススタディが積み上がってきたので、企業担当者にアフィリエイトって手間やリスクに見合わない広告手法なんじゃないか?という雰囲気が醸成されつつあるのは想像出来ると思います(超迷惑!)。とは言えwebからのセールスは確保したい。
となればそのヘッジとして出てくるのは「優良なアフィリエイト事業者だけを選んでつきあいたい」という意向です。至極当然。
僕がおつきあいのある広告主さんは大体これと同じことを言っていて、どうしたら有力メディアが自社と提携してくれるか、ファーストコンタクトはどうやってとればいいか、どれくらい優遇すればいいのか、といったご相談を頻繁に受けていますので、肌感覚ではまさにその通り!という印象。
先日、鈴木珠世さんの広告主向けアフィリエイト活用セミナーを拝聴した際には真逆のこと(=質より量が大事!)を仰っていて、そこはアップデートした方がいいんじゃないかな~と感じました。キャンペーンとかセミナーで提携サイトの数を増やすより、有力メディアを人づての紹介で引っ張ってくる方が成果出やすいし、運用もラクなはず。
イベントで試供品配って特単あげるから紹介してね、みたいなバラまきがどれくらい効果あるのかは少々疑問です。僕がスポンサーの担当者なら、そのコストを有力メディアとの面談に使うでしょうね。月1件出すかどうかみたいなサイトを100個増やすより、1人が100個売ってくれる方が効率いいに決まってます(これはこれで一極集中のリスクはありますのでバランスは必要ですが)。
僕の記事を読んでくれているあなたには、ぜひ広告主から選ばれるメディア事業者になって欲しいと強く願います。逆に、選んでもらう努力を怠る「なんちゃってアフィリエイター」はこれから門前払いを受け、厳しくなるかもしれません。
企業のサラリーマン相手に自分が選ばれるには、とにかく低リスクを強調することです。
・いきなりバックレたりしないか?事業の継続性があるか?
・コンプラ遵守の姿勢があり関係法令の知識をアップデートしているか?
・BtoBの意味を理解し相互の共存共栄を実現できるか?
クライアントが顔をしかめる「しょ~もないアフィリエイター(笑)」と、取引先として認められやすい「まともなメディアさん」との基礎的な違いはこんなとこだと思います。幼稚で馬鹿馬鹿しいと感じるかもしれませんが、これすらできてない人が非常~に多いのが我らのアフィリエイト業界ですからね。無論、法人化しているに越したことはありませんが、その辺は他の材料次第でしょう。要は事業への本気度や、あなたの社会性が伝わればよい。
会社員は自分の判断に由来するトラブルが一番キライなので、成績が良くても問題を起こしそうな人には近寄りたくありません。どっちかというと平凡で真面目な人が好きです(だから会社が大きくなると保守傾向が強まって衰退してくんですけど)。その辺を分かってますよと自己PRするだけでも印象が変わってきますので、ぜひ社会性をアピールしてください。書いててアホくさい話ですけど、ほんとこれすらできない人が多すぎる…w
今回の薬事法セミナーはアフィリエイト運営者向けに特化した内容で、「こういうサイトでこういうバナーを貼った場合にどういう問題があるか」といった具体例が頻繁に登場して面白かったです。質疑応答もかなり熱が入っていて、フワフワした概念的な内容ではなく相当に踏み込んだものでした。質問を聞くと、真面目にサイト運営してる人だとすぐにわかりますね。聞いてて確かにそういうこと多いよな~と頷きすぎて首が痛くなった。
健康食品・サプリ・化粧品・美容医療など、高単価でASPからの紹介も多いジャンルだと思いますが、これらを扱っている方は覗いてみるのもいいんじゃないでしょうか。4・5・6月に2回目以降が開催される予定になってます。単発参加でも大丈夫みたい。
セミナーの詳細:薬事法&健康増進法セミナー